テレビとネットの横断業界誌 Media Border

2019年04月号

「ネットワーク中立性」は放送事業者とどう関係するのか?

2019年04月12日 10:07 by sakaiosamu
2019年04月12日 10:07 by sakaiosamu


※総務省の中間報告書案のPDF画像

Introduction
総務省では様々な会議体が開催され多様な話題が議論されている。放送業界に直接関わるのは「放送を巡る諸課題に関する検討会」だが、「ネットワーク中立性」をテーマにした研究会は放送の間接領域として気になる場だ。だが専門性が高そうでなかなか気が引ける人が多いのではないだろうか。ミライテレビ推進会議の常連メンバーで各セミナーや会議にも足しげく通う岩井義和氏が、その中間報告案について解説する原稿を送ってくれた。これを機にこのテーマについて知っておきたい方には、オススメの内容だ。ぜひ目を通してもらえればと思う。

 

 

 

 

書き手:岩井義和
テレビ情報商社、テレビメーカー系VODプラットフォーム、テレビ視聴質調査会社を経て、
現在ケーブルテレビ会社で省庁渉外や政策調査を担当。
yoshikazu.iwai@gmail.com

 「ネットワーク中立性」というワードを見聞きしたことがあるだろうか?インターネット網を流れるすべてのデータは、その内容や提供者・利用者によらず、平等に取り扱わなければならないといった原則のことだ。

 このほど総務省から「ネットワーク中立性に関する研究会 中間報告書」やそれにまつわる事業者の意見が公表された。

 「ネットワーク中立性」の議論は、かいつまんで言えば、「インターネット接続事業者のトラフィック管理がどこまで認められるか」ということに尽きる。

 本稿では、「映像を届ける」という意味において、電波同様、その重要性が高まってきたインターネットインフラにおいて、放送事業者起点で、研究会の議論がどう関係するのかといった点にフォーカスして、議論の一部をお伝えする。

優先制御を巡る議論について

 空想の話だが、例えば私が昼休みにスマホで「いだてん」を見逃し視聴したとしよう。私が加入するプロバイダはNHKと個別に優先通信契約をしていて、NHKオンデマンド利用者の通信を優先的に通す設定になっているので、混雑時にも快適に視聴可能だ。

 夜、家に帰り、テレビで「いだてん」の見逃し視聴の続きを見たが、通信速度が遅いのか、ブロックノイズが出て不快だ。マンションもスマホと同じプロバイダだが、我が家の通信料金メニューでは4Kテレビ端末(4K視聴)までは、優先通信の対象機器とされていないようだ…。

 どうだろうか?こんな極端な例は万が一にも起こりえないが、流れるコンテンツやその提供事業者、利用端末、あるいは料金メニューなどによって通信速度に差をつけられる世界が訪れたら?

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