MediaBorderでは今号から、<ローカル再編のヒント>というシリーズ企画を立ち上げる。12月号の記事「ローカル局の再編が、はばかることなく議論される時代になった〜自民小委員会第二次提言〜」でも触れた通り、自民党小委員会が「ローカル再編」の議論を促し、おそらく総務省でこれをテーマにした会議体がスタートする。政官主導の議論が行われるのに対し、市民視点、地域発想の再編議論も必要ではないか。そんな考え方で、MediaBorder独自の視点で再編のヒントになるような記事を展開したいと考えている。
その第一弾として、ぜひ皆さんに知って欲しいのが「関係人口」の考え方だ。この概念の第一人者、雑誌「ソトコト」編集長の指出一正(さしでかずまさ)氏への取材を通して、「関係人口」の概論とそれを踏まえた今後の地域メディアのあり方について考えたい。今回はその前編として、「関係人口」の概念と指出氏の関わりをお届けする。ぜひお読みいただきたい。
まず指出氏がソトコト編集長になるまでをうかがった。氏の人物紹介の意味もあるが、そのプロセスが「関係人口」の理解の補助線にもなる。
「カルトQ」に優勝してアウトドア雑誌に入社
指出氏は群馬県高崎市の出身で、小学生の頃から魚釣りにハマり、高校時代には釣り関係のありとあらゆる情報を吸収して詳しくなった。
「古今東西の釣り雑誌やカタログを暗記するくらい読んでいました。東京の人は釣りの知識をいっぱい持ってるんだろうと思い込み、相手にしてもらうには共通言語は持ってないといけないと、カタログで釣竿の品番まで覚えました。」
大学に入って東京で暮らし始めて、釣り雑誌のアルバイトに応募した。すぐに連絡をくれたのが山と渓谷社の「アウトドア」編集部だった。
「行ってみるとアラスカグリズリーみたいなヒゲのおじさんやネイティブアメリカンっぽい人なんかがいて、これは面白いなとバイトを始めました」
その頃、フジテレビの深夜番組で「カルトQ」が放送されていた。ある分野にめちゃくちゃ詳しい人たちが集まり、知識を競い合う。例えば「F1」がテーマだとエグゾーストノイズを聞いて早押しで「フェラーリ!」などと答える空前絶後のクイズ番組だ。指出氏は、その「ルアーフィッシング」の回に出たら優勝したのだそうだ。「カルトQ」を見ていた人なら、ここで優勝することの物凄さはわかるだろう。
「編集部の皆さんは喜んでくれたというより悔しがっていましたが、それで認めてもらって正式に入社することになりました」
伝説のクイズ番組「カルトQ」で編集者人生がはじまった指出さんもある意味、伝説の男かもしれない。
それにしても、釣りマニアの青年がなぜ「関係人口」のエバンジェリストに至ったのだろう?
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