テレビとネットの横断業界誌 Media Border

2018年12月号

ローカル局の再編が、はばかることなく議論される時代になった〜自民小委員会第二次提言〜

2018年12月11日 10:02 by sakaiosamu

先週7日、自民党の「放送法の改正に関する小委員会」が「第二次提言」を発表した。

この委員会の「第一次提言」は、2015年9月に出されておりNHKの同時配信実現に向けたロードマップを作成すること、と書かれたものだった。自民党のWEBサイトにはいまもその文書が公開されている。

→「放送法の改正に関する小委員会 第一次提言(pdf)」

そしてこれを受ける形で2015年11月に総務省がスタートしたのが「放送を巡る諸課題に関する検討会」通称”諸課題検”だ。9月に提言が出て11月にはそれを受けた会議が始まったわけだ。

つまり第一次提言はあらかじめ政官と放送業界で「同時配信について議論しましょうね」と合意があって出たものだと推察できる。日本の物事の進め方とはかくもまだるっこしい手続きを経るものらしい。

この小委員会が三年ぶりに出したのが「第二次提言」だ。NHK同時配信の法案提出の目処がやっと立った(3年もかかった!)ので、第二次を出すタイミングが来たのだろう。その内容は、ローカル局の今後の議論を促すものだった。全4ページのうち最後の1ページにだけNHK同時配信の進め方についての意見が書かれているのだが、なぜかその部分を強調する報道の方が多かった。

朝日新聞のこの記事などは典型だ。

→「NHKネット同時配信実現を 自民委、総務省に提言」

なんと記事中にはこうある。「NHKがテレビ番組をインターネットで常時同時配信するのに必要な放送法改正案を、来年の通常国会に提出することを柱とした提言をまとめ、総務省に提出した。」いやいや、どう見ても”柱”はローカル局についてで、同時配信は言い方が悪いが”ついで”に書かれた感がある。まあ新聞社は放送業界のことになると”そのまま”伝えないことはこの3年間でよくわかったので、今回もそうなのだろう。放送業界についての新聞記事は、そのまま信じない方がよいのだ。むしろ、裏を読む方が面白い。

話が横道に逸れたが、MediaBorderでは、新聞社がきちんと書かないこの「第二次提言」について書き記しておきたい。もっとも、読者の中の民放各局関係者はとっくに入手し熟読したことだろう。だから放送局以外の読者の皆さん向けに以下は書き進める。もちろん放送局の方にも楽しんでもらえるとは思うが。

ただ、なぜかこの提言はWEBで公開されていない。いかにも、まず業界内で情報共有しましょう、と配慮しているかのようだ。新聞社も会見で聞いた話を記事にしてないし、文書も公開しない。これがこの国のジャーナリズムとやらの実態なのだ。まず我々業界だけでよく読み込みましょう、ということなのだろう。

文書はまずいまの放送業界の現状をかなりあけすけに書いている。これまでのやり方が行き詰まりつつあることから目を背けない姿勢を表明しているのだ。その上で、2ページ目では「五つの基本的な考え方」を述べている。

一. ネットで動画を配信する海外事業者との競争も踏まえ、ローカル局の経営基盤を更に強化する。

二. ローカル局の生命線はコンテンツ制作であることを再認識し、放送だけでなく、ネット配信、海外展開など、新たな媒体へのコンテンツの提供を積極的に行うため、コンテンツ制作能力を高める。

三. 「東京集中」を促してきた情報発信の仕組みから、「地方への憧憬」を導く仕組 みにシフトする。

四. キー局・ローカル局・ケーブルテレビが連携し、業界全体で中長期的な将来像を 共有する。

五. 民放テレビ、ケーブルテレビ、ネット配信、それぞれに適用される/されない規制の検証を行う。

この考え方にはいろいろツッコミたくはなる。「二」はどうだろう。コンテンツ制作が生命線、というのはどうなのか。「世界へ売れるコンテンツを作れ」と言いたいように見えるが、本当にローカル局の生命線はそういう意味でのコンテンツ制作だろうか。「三」は東京集中からの方向転換を宣言するのはいいのだが、なぜ地方への”憧憬”なのだろうか。そんな情緒的なことではなく、地方経済を活性化するのがローカルメディアの役割だと明示しないと”生き残る”ことにならないのではないか?「四」でキー局ローカル局とケーブルテレビを並べているのは評価したい。連携を考えるべき時が来ている。ただ「五」は少々気をつけるべきポイントだ。「規制」には新たな「介入」の懸念もつきまとうものだ。

ツッコミも入れつつ、自民党の議連からの提言としては評価していい内容だと私は受けとめた。そして、この考え方を元に書かれた具体的な提言を並べてみよう。

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