テレビとネットの横断業界誌 Media Border

2018年09月号

北海道地震で、テレビマンは何ができたか〜北海道テレビ・三浦一樹氏寄稿〜

2018年09月25日 09:46 by sakaiosamu


2日目の夜のすすきの。これが光ってないのを見たのが一番ショックだった

Introduction
9月初旬に起こった北海道の地震は、メディア関係者にとって考えさせられる出来事でした。電気が止まった時、放送もネットもなすべきことはないのか。それでもやるべきことがあるとしたら何か。本誌購読者でミライテレビ推進会議にも折りにつけ参加してくれているHTB北海道テレビの三浦一樹氏は、地震の後にいろいろと奮闘していることがFacebookから伝わってきていました。そこで三浦氏に、地震後のテレビ局員として何をしたのか、寄稿してもらいました。ぜひじっくりお読みいただき、読者コミュニティで意見ももらえればと思います。

 

 

書き手:三浦一樹
北海道テレビ
クロスメディアコミュニケーションセンター兼編成局編成部

北海道胆振東部地震、発生

 9月6日(木)の深夜3時7分、北海道胆振地方中東部を震源とするM6.7の地震が発生。その直後、道内最大の火力発電所である苫東厚真火力発電所が破損した。

 電力需要の約半分を担っていた発電所の停止により、北海道管内ほぼ全てが停電する「ブラックアウト」へ。主に土砂崩れなどにより、死者41人、負傷者681人(2018年9月16日現在)という大きな被害が出たのが「北海道胆振東部地震」だった。

 この記事を読んだ方にとって、今後いつどこで発生してもおかしくない大災害へ向けてひとつでも参考になることを願いながら、発災からの動きを振り返っていきたい。


地震直後の社内_引越準備中だったためダンボールがひっくり返ってる

震災後、何をしたのか

停電中の放送

 全道停電をしている中でも、無事に発電機が動いた後は放送を続けた。「そもそもテレビが動かないのに、誰が見てるんだ」という疑問はあったが、ワンセグ携帯端末はもちろん、自家用車の割合が多い北海道ではカーナビによる視聴も多くあるだろう、ということになった。

 実際に車を発電機がわりにして、車内で夜を明かした方も大勢いるようだった。

放送の補完

 放送内容のネット同時配信も行った。テレビもカーナビもない人に向けてスマホで簡単に見られるようにと、YouTubeにおいて、情報カメラを常に配信しているチャンネルがあるため、これをスタジオに置き換えての配信。権利クリア出来ていないものに関しては、その間にスイッチャーを入れてマニュアル操作で蓋をしての配信を実施した。


データ放送による地震当日の高速道路の様子

各種SNSでの動き

airi_official instagram
 情報番組班と「他に何ができるか」「SNSで自分が必要と思うことやっていこう」という話になり、ディレクターたちは裏の取れた情報の拡散。出演者たちは視聴者の方を励ますメッセージを伝えた。 個人的には、出演者の方々がほんとに暖かい言葉を投げかけていて、我々の番組はこの方々あってこそなんだ、という事を改めて感じた出来事でもあった。

htb_ichimoni instagram
 youtubeで同時配信について告知したインスタグラム。視聴者からはバッテリーが動画はちょっと。。といったリアクションが寄せられた

HTB_ichimoni twitter
 今回の発見のひとつでもあったのだが、「トリキリスーパー」とSNSタイムラインの相性がとってもよいのではないか。ということ。1枚の画像に情報をわかりやすく詰め込むノウハウがそのままSNS上でも活躍するのではないか。という仮説。しかし、基地局のバッテリーが限界を迎え、画像1枚を開くのにもすごい時間がかかるようになっており、ただのテキストでなければ届かなかった。

振り返ってみて

 「ひとりでも多くの人に情報を届けたい。届けなくてはいけない。」というのはテレビで働く人にとっては矜恃としてだれもが持っているのではないだろうか。災害時においては特に。

 今回の地震では、道外の人に向けてはその一定を役割を果たすことができたと思う。キー局に回線をつなぎ、被災地の現場から直接その状況を伝えてきた。全国から支援物資やボランティアの方が集まったことに関しては非常に効果的だった。しかし、道内の人に向けてテレビが期待されていたような伝え方が実際にできたであろうか。ほんとに困っている人が近くにいるのにその人たちへ向けて、必要な情報を伝えることがほんとにできたのであろうか。

 私自身の感情としては「悔しい」が一番大きなものだった。

 災害時はインターネットでの同時配信がもっとも有効だと思っていた。しかし、ここまで広範囲・長期間の停電が起きてしまっては静止画を開くのですら時間がかかるし、バッテリーを消費していく。災害情報を動画から得ること自体が非現実的な状況であった。

 ローカルテレビ局としては最大唯一の武器である動画が使えなくなった途端に、こうにも打つ手がなくなるのか。と、愕然とした。報道メモとして自治体や交通機関の情報や避難所情報については、それを所管しているところがもちろん同時にツイートしているし、情報ソースを散らさないためにも、大元の情報をリツイートすることをメインとして、補足する形でテキストでの情報発信を行っていった。

 北海道に根ざす、地域メディアとして道内の今困っている人に情報を伝えたい。ガラケー全盛期であれば、ワンセグがあるから、と自信を持って言えたのかもしれない。こういう時はラジオに任せておけばいいんだよ。という方もいたが、それだと本当に悔しいのである。

 地震発生から今まで、いろいろ考えてきているが、どういう対応をすればよかったのか。という答えはいまだに見えていない。大規模停電時にテレビ局ができること。この記事を読まれた方々、一緒に考えアクションしませんか。  


9月19日に復活したすすきの。元気です!北海道

 

 

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