テレビとネットの横断業界誌 Media Border

2018年08月号 vol.39

「地域NO.1放送局」から「地域NO.1」メディアへ!地域戦略に大胆にシフトしたKBC九州朝日放送

2018年08月03日 16:19 by sakaiosamu

7月13日、筆者は福岡市のKBC九州朝日放送の本社ビルを訪れた。福岡の繁華街・天神の中心部から徒歩で7〜8分。福岡市出身の筆者が子どもの頃からある、市民にはおなじみの建物だ。たまたま前日に、日本マーケティング協会九州支部での講演に呼んでいただいたので、これを好機と前もって取材のアポを入れておいた。この4月から5カ年の中期経営計画をスタートさせ、それに伴い大きな組織改編を行ったと聞いていた。その具体的な中身を直接聞きたかったのだ。 

2年前に社内研修で呼んでいただいた際にお会いした和氣靖社長、そして4月から地域共創ゼネラルプロデューサーに着任した大迫順平氏のお二人にお会いできた。そこで吸収したことをできるだけわかりやすくここで読者のみなさんにお伝えしようと思う。ただ非常に濃い内容なのでじっくり、ゆっくり読んでいただきたい。とくにローカル局のみなさんにとっては大いに参考になるお話だと思う。

まず先に概要だけ書き並べておきたい。

  1. KBCは5カ年の中期経営計画で、「地域戦略」を核として打ち出した。
  2. それまで取組んできた海外展開はサスペンドした
  3. 新しい時代に対応するためメディア工房を部署として編成した
  4. これらに投資するため年間の最終利益を半減する予算を立てた
  5. ラジオは単体で収支を追わずKBCというメディア全体の中でポジションする 

私はかねがね、日本のメディア企業には”経営”がないと感じていた。上場した企業さえも正式に中期経営計画を発表するところは少ない。あるキー局のそれなりの立場の人に「御社は経営計画ってあります?」と聞いても「さあ・・・あるんじゃないかな?」という曖昧な答えが返ってきて驚く。

KBCで和氣社長にインタビューして一番の感想は「これが経営だ!」というものだった。戦略を明確に立てて投資も予算化してそのために利益が薄くなることも織り込む。2020年という節目の年が近づき誰がどう見てもメディアに本格的変化が訪れる中、実に正しい考え方だと受けとめた。


※KBCの和氣社長。情熱的に話してくださった。

KBCが何にどう取組もうとしているか、できるだけつぶさに文章化してみよう。

KBCのエリアとポジションを踏まえて出した経営計画

まず今回の5カ年計画について、和氣社長は特別な意味があることを語ってくれた。

「2018年度から2022年度への5年間を見たときに、それ以降に考えられる大きな環境変化を想定して取組むべきと考えました。従来型ビジネスモデルが崩れる可能性も含めて、我々の力と所与の条件をきちんとおさえ、これからの5年間に何をすればそのあと成長できるかを見すえたということです。2023年以降、自分の次の社長が進めやすい土台だけでも作りたい。それが私の基本的な考えです」

激変するメディアの未来、テレビの将来に備えての準備期間としてこの5年間を設定したというのだ。これから放送局は大変なことになると業界のほとんどの人びとがわかっているのに、どうすべきかの議論はほとんどなされていない。KBCは、その困難な議論に取組んだ。

「KBCの持っている条件は何かと考えたとき、視聴率はありがたいことにナンバーワンです。2018年の上半期も、全てのカテゴリーで1位をいただきました。またマクロで見ますと、多くの県で人口がシュリンクしていく中で福岡はまだ発展している。それがバックグラウンドとしてあります。」

福岡の活気とKBCがその中でトップだからこそ、大胆に未来への一歩を踏み出す判断ができた、ということだ。

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