テレビとネットの横断業界誌 Media Border

2018年07月号

指標を共通化することで、メディアの価値は高まる〜デジタルコンテンツ視聴率についてニールセンデジタル・宮本社長に聞く〜

2018年07月19日 15:07 by sakaiosamu
2018年07月19日 15:07 by sakaiosamu


※ニールセンDCRプレゼン資料より

7月2日、こんな見出しがメディア界のニュースとして人びとの間を駆け巡った。

「ニールセン、デジタルコンテンツ視聴率を日本で提供開始」」

筆者は「おお、ついに!」と思った。ニールセンデジタルの宮本淳社長とこのところ立て続けにセミナーなどでご一緒し、デジタルコンテンツ視聴率(以下DCR)を近々提供する話は聞いていたのだ。これまでのデジタルメディアにおける課題を解決する指標として注目されることはまちがいない。またテレビ番組のネット配信を新たに価値付けする指標としても重要になりそうだ。そこでニールセンに行き、宮本社長の話をうかがった。

これまでのデジタルメディアのオーディエンスデータには課題がいくつかあった。100万PVです!と言っても自分で計測したもので第三者の公明正大なものかがわからなかった。また媒体社によって指標が違い、MAUを公開したりUB数を誇ったりするのだが、媒体同士を比べられなかった。さらにはひとりでPCやスマホ、タブレットを使う人も多いので本当の意味での人数を把握できなかった。他にも代表性の問題、分散型メディアをサイト横断で把握できるか、コンテンツ単位で集計できるかの問題もあった。


ニールセンデジタル代表取締役社長・宮本淳氏

「こうした問題をすべて解決するのがDCRです。オーディエンスデータには、中立的な第三者による計測で、市場代表性を担保した網羅性のある共通指標となり得るデータが必要だったのです。」宮本社長は、力強くそう語った。

DCRの特長を端的に示したのが冒頭の図で、ひとりの人がPCとスマホとタブレットで視聴するメディアを「ひとりの人」としてきちんとカウントする、「人」ベースのデータだ。それにより、メディアの価値、コンテンツの価値が示される。これからのメディアのデータは、統一された指標で比べることもできるということだ。

DCRは、代表性のあるニールセン独自の調査パネルのデータと、全数データを両方利用するハイブリッド方式で算出する。その独特の計測方法を解説したのがこのチャートだ。

※ニールセンDCRプレゼン資料より

 少々わかりにくいかもしれないが、ポイントは2点。

1点目は、計測対象のサイトやアプリに専用のSDKを導入してもらうことだ。

SDKはプログラムに組み込むもので、サイトやコンテンツだけでなくアプリも正確な計測ができる。iPhoneなどiOS端末のアプリはこれまで計測が難しかったのを、SDKの利用でそうしたデバイスでも計測が可能になった。

2点目は、計測した情報をFacebookに照らし合わせて視聴者属性を付与すること。さらにそれをニールセンの代表性を持つパネルで補正すること。

この部分がDCRのもっとも特長的な要素だ。属性を把握すること、代表制を担保することが可能になった。

この計測方法で以下のようなデータが手に入る。

例えばあるテレビドラマで考えると、その第3話がTVerでどれだけ視聴されたか、GYAOではどうだったか、さらに平均視聴時間は何分だったか、見た人の性年齢別の内訳はどうか、などなど事細かにデータを得ることができるのだ。あるいは、ざっくりドラマがすべてのプラットフォーム上で何回視聴されたかもわかるようになる。

「このSDKを多くの媒体社さんで導入していただくことが目標です。すでにいくつかの媒体社さんでテストを始めていただいているところです。」

ニュースリリースの「提供開始」とは、 代表性パネルでのPCとモバイルを跨いだトータルリーチの「提供」という意味もあるが、重要なのはこのSDKを導入して自らのサイトを計測しようという媒体社への「提供」という意味で、走り出したということだ。最終的には主なメディアがすべて参加してくれれば理想的なエコシステムができあがる。

宮本社長に、DCRを媒体社が導入することでメディアの価値がどう高まるか、実際のダッシュボードも見せていただきながらさらにお聞きした。

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