テレビとネットの横断業界誌 Media Border

2018年07月号

第3次答申は2006年竹中懇の再現か?〜塚本幹夫が見つめた放送改革論議〜

2018年07月10日 10:46 by sakaiosamu

Introduction
本誌ではさんざん取り上げてきた「放送改革論議」。4条撤廃が浮上しない限り新聞記事にはもうなりそうにないが、論点が多々詰まった論議だったと思う。また放送についてそもそも考えるべきポイントを洗いだすいい機会でもあった。そこで先日のセミナーでも登壇してもらった塚本幹夫氏に原稿をお願いした。塚本氏はフジテレビ在籍中の報道時代に総務省を担当し、また2010年代には霞が関から情報を収集する職務にも就いていたため、テレビ局と行政の関係に精通している。そんな塚本氏ならではの視点で放送改革論議を切ってもらった。議論の背景が、ちがった角度で見えてくるだろう。ちなみに上の画像は2006年の竹中懇の各項目がその後どうなったかを塚本氏が書きだしたもの。「炎」は今回の規制改革推進会議の第3次答申に再び出てきた項目だ。記事と併せて見てもらうとわかりやすい。

書き手:ワイズ・メディア メディアストラテジスト・塚本幹夫

お初に寄稿させていただきます。塚本幹夫です。

今の本業はスマホアプリの分析や共創事業を手がけるフラー株式会社の常勤監査役。その一方でワイズ・メディアという個人会社でメディアストラテジスト(戦略家)をしております。

2016年にフジテレビを退職したのですが、35年間という会社員稼業の半分ぐらいを放送と通信の境目で過ごして来ました(報道やコンテンツ事業、メディア渉外など部署は様々ですが)

その経験から、今回の規制改革推進会議を巡る騒動を昔に遡って検証してみようと思います。

 

「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」なんて言葉があります。

 今回は歴史というほど昔ではありませんが、規制改革推進会議を舞台にした“幻?”の放送法4条撤廃を含めた一連の騒動は、20年前からこの分野を取材していた自分からすると、「あー、またか」といった感じでした。

 「4条の問題は議論していません」同会議の投資等WGの原英史座長はおっしゃっていました。規制改革推進会議が6月4日に出した第3次答申は、結局放送法の根幹まで揺さぶるような表現にはなりませんでしたが、「Society5.0時代に向け、放送の新たな未来像を築く」として、具体的に様々な検討課題を突きつけています。 

 例えば放送同時配信の推進。新規参入の促進。NHKの国際部門強化やアーカイブの活用。放送用周波数の有効活用。制作取引の改善。どれをとっても総務省や放送業界にとって古くて新しい問題ですが、実はこの答申内容の大半が12年前に総務省内で検討。報告されていたことをご存知でしょうか。

 それが「通信・放送の在り方に関する懇談会」通称「竹中懇」でした。

当時の竹中平蔵総務相が2005年暮れに突然設置を発表。松原聡・東洋大学教授を座長とし、翌2006年1月からわずか半年の検討期間で同年6月報告書を提出。その過程ではNHKの民営化も含めた過激な検討もあり、対抗する業界も積極的にロビイングをしました。

 結果放送だけで15の提言がなされました。そのうちIPマルチキャスト放送のように実現した項目が8つあり(地上アナログ放送周波数の有効利用は一旦実現したものの、NOTTVの撤退で現在空白)、残り7つは実現しなかったか、現在総務省で検討中の項目なんですが、内容はびっくりするくらい今回の答申と似通っています。 

この続きは1ヶ月無料のお試し購読すると
読むことができます。

関連記事

週刊ダイヤモンドのメディア特集に出てこなかった巨艦・NHKについての雑感〜新志有裕氏・寄稿

2018年10月号

ローカル・ニュースの再生は可能か? デジタルニュースメディアのカンファレンスONA18レポート〜脇浜紀子氏・寄稿記事〜

2018年10月号

北海道地震で、テレビマンは何ができたか〜北海道テレビ・三浦一樹氏寄稿〜

2018年09月号

読者コメント

コメントはまだありません。記者に感想や質問を送ってみましょう。

バックナンバー(もっと見る)

2018年11月号

2018年も秋が深まりはじめた。どんよりして薄寒いように思える。だがこの重...

2018年10月号

メディアの変化は加速し、嵐のように迫っている。どんな嵐が起こるのか?嵐が去...

2018年09月号

メディア維新とでも呼ぶべき動きがいま、静かに巻き起こりつつある。それはメデ...