テレビとネットの横断業界誌 Media Border

2018年07月号

愛と幻想の配信イズム 〜山本英治氏寄稿記事〜

2018年07月03日 11:19 by sakaiosamu

Introduction
これから、MediaBorderでは読者からの寄稿を積極的に採り上げていきたい。そう呼びかけたらさっそく、毎日放送の山本英治氏が原稿を寄せてくださった。山本氏は「ほなね爺」の名でTwitterを使いこなし軽妙なつぶやきを世に投げかける人として、関西の放送業界では知られている。筆者も実は、Twitterで知りあった。ミライテレビ推進会議の常連であり古参でもある。そんな山本氏が同時配信について思うところを原稿にまとめてくださった。刺激的なタイトルとともに、堪能してほしい。

 

 

書き手:毎日放送・山本英治

Media Border 読者の皆さん、初めまして。毎日放送の山本と申します。

私は営業、編成、インターネット関連部門、経営戦略室などを経たのち定年を迎え、今は再雇用の身で配信の手伝いなどをしています。なんだ、OBか、と思われるかもしれませんが、退職しちゃっているからこそ、もはや何も怖いものがなく(笑)、実は一番自由に発言できる立場でもあります。

今回はそういう立場から、会社的な様々な“しがらみ”を気にせずに、しかし、愛を持って配信について語りたいと思います。

テレビ番組の常時同時配信に関してはいろいろな意見を耳にします。中でも私が忘れられないのは、去年あるシンポジウムで登壇した若い女性パネリストが、司会者から「テレビの常時同時配信についてどう思うか?」と問われて、ひとこと「おこがましい」と答えたことです。

曰く、「近くにテレビがないから見ないんじゃなくて、面白くないからテレビを見ないんです。それをネットで配信さえすれば見てもらえると考えること自体がおこがましい」と。

テレビマンは「面白ければ見てもらえる」と無邪気に信じている向きがありますが、実は若い世代の間ではハナからテレビは面白くないという印象が定着しつつあるのです。だからまず、その印象を覆すような面白い番組を作って「テレビは面白い」と認識してもらうこと。そこから始めないことには配信もへったくれもないのだと痛感しました。

そのことを肝に銘じた上で、もう少し筆を進めます。

NHKさんは常時同時配信に随分熱心で前向きに準備しておられます。クリアするべき問題がまだ残っているのも確かですが、私はむしろNHKさんに頑張ってもらいたいと思っています。 

でも、では自分たちはどうするべきかと考えると、ちょっと躊躇してしまうのです。

もちろんユーザ側のメリットはあるでしょう。また、常時同時配信をすることによって視聴者層が広がり、それがテレビに戻ってくるという、常時同時配信推進論者の主張も解らないではありません。でも、その前にやるべきことがあるのではないかなと思うのです。

この続きは1ヶ月無料のお試し購読すると
読むことができます。

関連記事

第3次答申は2006年竹中懇の再現か?〜塚本幹夫が見つめた放送改革論議〜

2018年07月号

氏家夏彦氏 寄稿記事〜あやとりブログが見通したテレビの未来は具現化したか(後編)〜

2017年07月号 vol.26

氏家夏彦氏 寄稿記事〜あやとりブログが見通したテレビの未来は具現化したか(前編)〜

2017年07月号 vol.26

読者コメント

バックナンバー(もっと見る)

2018年09月号

メディア維新とでも呼ぶべき動きがいま、静かに巻き起こりつつある。それはメデ...

2018年08月号

メディア界もまるで明治維新のような大きな変化が起きようとしている。地上波で...

2018年06月号

この夏はメディア界にとっても暑くなりそうだ。6月はその前のじめじめした梅雨...