12月15日、先週金曜日に日経デジタルマーケティングにこんな記事が載った。
「テレビCMとデジタル広告とを一括把握できる新指標、JAAが開発中」
さほど大きな記事には見えないかもしれない。だがこの雑誌は紙とWEBのハイブリッド媒体で、紙の方の年間購読をしないとWEBの記事のほとんどが途中までしか読めない。ところがこの記事はフルオープンで、誰でも最後まで読める。それはおそらく、この記事の重要性を鑑み、多くの人に届けたいという意思の反映だろう。
私はこの雑誌に何度か寄稿したり、イベントをお手伝いしてモデレーターを引き受けたりしている。そして実は、この記事の内容はあるセミナーの企画を安倍編集長と進めて行く中で聞こえてきた情報だった。もちろん記事にはその後の取材で得た情報が豊富に含まれている。
そういう次第で、この記事の内容以上に大きな情報を私が持っているわけでもないのだが、この記事に書かれていることの重要性を私なりに補足してみようと思う。ひょっとしたら広告界の大きなターニングポイントになる話かもしれない。
スポンサー側が新たな指標を作る画期性
あらためてこの記事のポイントを整理しよう。JAA(日本アドバタイザーズ協会)がテレビCMとデジタル広告の出稿量を一括で把握できる共通の指標を開発している、というのが記事の骨子だ。「テレビデジタル共通指標」とりあえずそう呼ばれているらしいが、そもそもスポンサー側が広告の指標を作ることが前代未聞だ。もちろん個々のスポンサー企業では独自の指標を使っていた可能性はある。だがJAAという業界団体の旗振りで指標を作るのだから、どの企業も使っていいし、同じ指標を共有するということだ。
そういう客観性、通貨のような役割を果たせることがこの指標の重要ポイントであり、もし目論み通り普及すると広告界の大きなターニングポイントになる可能性がある。それくらい大きな出来事ではないかと私は感じている。
テレビCMはメーカーと流通の交渉を左右してきた
よく言われることではあるが、テレビCMの役割は商品を生活者に印象づけることだけではない。企業内部や取引先など、企業に関わる様々な人びとや事業者にも大きな影響を与えてきた。
そのわかりやすい例が、企業と流通の関係への影響だ。スーパーやコンビニ向けに商品を出すメーカーは、その商品をお店の棚に置いてもらわないと売れるものも売れない。流通企業のバイヤーは、商品そのものの価値とは別に、テレビCMの出稿量もメーカーに問う。テレビCMをあまり出さないなら生活者の認知も広がらず、売れないのではないかと考える。だからメーカーは「この商品はCMにも力を入れて、○○○GRPも展開します」と言いたい。言いたいので本当に○○○GRPのCMを打つ必要が出て来るのだ。
90年代にGMSと呼ばれる形態でイトーヨーカ堂やイオンが伸びてきてこの傾向は顕著になった。コンビニの普及もこれに重なった。大袈裟に言うと流通企業に気に入ってもらえる商品開発をし、流通企業に棚を確保してもらうためにテレビCMを展開する。そんな構造ができていった。
2000年代にデジタルの時代になっても、その構造は変わらなかった。デジタル広告の効果や指標は長らく確立せず、流通企業の気を引くまでにならなかった。流通企業の担当者は「GRP」という単位はもうカラダに馴染んだが、デジタルはピンと来ない。
そんな傾向は2010年代になっても変わらないままだった・・・
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