テレビとネットの横断業界誌 Media Border

2017年09月号

テレビはネットでメディアになれているのか?〜A-PAB講演より・その1〜

2017年09月29日 14:34 by sakaiosamu

MediaBorder発行人・境は9月27日、A-PAB(一般社団法人 放送サービス高度化推進協会)にお招きいただき講演を行った。千代田放送会館のホールは満員になり、サテライトルームも使うほどだったそうだ。これはたぶんに、もうおひとりの講演者である電通総研・奥律哉氏の知名度と人望によるもの。私はその前座のつもりでお引き受けしたのだが、事務局として申し込みが多いので早めに来ないと席がないかもとアナウンスし、結果的に煽る形になったのだろう。私が登壇する段階で席はびっしり埋まっていた。それはそれでうれしいし、いつになく緊張もした。事務局の方が「お二人は我々のドル箱ですよ」と持ち上げてくださったので、話のツカミに使わせていただいた。「私と奥さんで"ドル箱兄弟"を結成します」などと言ったら、会場のみなさんには多少笑ってもらえた。

セミナーはこのところもやってきたが、自分一人での講演は久しぶりで、内容はまったく一から組み立てた。なかなかうまくまとまったと思うので、ここで何回かに分けて再録的な記事にしておこうと思う。

テーマとして「メディアとしてのテレビ」を置いていた。導入は「テレビはネット上でもメディアになれているか」という問題提議だ。実際に使ったスライドを少しお見せしながら内容を紹介しよう。

これは会場のみなさんに私から質問したスライドだ。ここに登場するサービスについてそれぞれ「メディアだと思う」人に手を上げてもらった。あえてメディアの定義は示さずに、感覚的に感じたままを答えてもらったのだ。

当然、「地上波テレビ」は全員が手を上げた。AbemaTVもほとんどの人が上げたと思う。他は、上げた人もいるが上げなかった人も多かった。

実際、メディアとは何だろう?もちろん言葉の原点の意味は、「情報の入れ物」だ。DVDやUSBメモリのようなもの、古くはカセットテープなどもメディアと言える。

だが我々がテレビや新聞などについて話す際の「メディア」には、単純に「情報の入れ物」だけの意味ではない気がする。例えば「マスメディア」という言葉は、「言論機関」の意味で使われていないだろうか。あるいは、情報の入れ物なら映画館もメディアと呼ばれそうだが、実際には映画館をメディアとはあまり言わないと思う。

つまりメディアという言葉には、世の中で何が起こっているかを教えてくれる存在、という意味があるのではないか。

この定義からすると、先ほどの質問も答えが見えてくる。Netflixは「メディア」とは言えないことになるだろう。Yahoo!はベースはプラットフォームだが、Yahoo!ニュースがあるので7割くらいはメディアだということになる。SmartNewsはそれよりさらにメディアだ。だが自ら情報を作成はしていないので、100%メディアと言えない気がする。AbemaTVは9割がたメディアだ。だがコンテンツを仕入れて流すチャンネルも多いので100%ではない。地上波テレビは、ほぼ100%メディアと言えそうだ。

ではこの定義に沿って考えた場合、「ネット上のテレビ」はどうなのか?とくに問いたいのが、猛烈な勢いで生活に浸透したスマートフォン上ではどうなのかということだ。

これに対し、多くのテレビ関係者はこう言うのではないか。「スマートフォンでもメディアだよ、だって見逃し配信やってるじゃないか」だがそうだろうか?

このスライドは、私のスマホの画面の1ページ目と3ページ目だ。

私は見逃し配信サービスをひと通りスマートフォンにインストールしていて、テレビ番組が気軽に楽しめるようになっている。だがそれらはNetflixやhuluなどと一緒に3ページ目に置かれている。一方1ページ目には、カメラやSafariなどの定番ものに加えて、GoogleMapや食べログなども並んでいる。さらにSmartNewsとNewsPicks、Instagramなどもある。最下部に並ぶ定番アプリは、FacebookとEchofon(Twitterクライアントアプリ)、そしてメールと電話だ。

テレビ関連のアプリはあまり使わない。なぜならば、いま何が起こっているかを教えてくれないからだ。 スマートフォン上で、テレビはまだメディアになれていないのではないだろうか?

私が思うに、こういうアプリが必要だ。

1ページ目におきたくなるような、つまり「いま何が起こっているか」を教えてくれる「テレビ」という名前のアプリが必要ではないか。もし本当に「何が起こっているか」を教えてくれるなら、私は毎日何回も開くだろう。同じ理由でヒマさえあればFacebookやTwitterを、SmartNewsを開くからだ。

同時配信の議論も、これを基準に進めればいいのに、と私は感じている。そう、「何が起こっているか」のひとつの答えが、同時配信なのだ。

そして「何が起こっているか」がわかればいいのなら、同時配信にこだわらなくてもいい。ニュースをオンデマンドで見せてもいい。ワイドショーで報じた内容をテキスト化してもいいのだ。「ワイドナショー」での松本人志の発言が毎週ネットニュースとして飛び交うが、それをテレビが自ら記事化してここで配信してもいい。

重要なのは、各局、ネットワークの記事がひとつのアプリで見られること。ひとつの局だけでは、残念ながら1ページ目には置いてもらえない。だがすべてのテレビ局からの情報がリアルタイム更新されていれば、最強の存在になれる。ネット上でいちばん新しく面白く信頼できる「何が起こっているのか」を答えてくれるのが「テレビ」になれば、何者も敵わないだろう。・・・その2、その3へ続く。

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