テレビとネットの横断業界誌 Media Border

2017年09月号

キー局は、メディア戦略を実践しはじめている〜SSKセミナー「民放キー局のメディア戦略」を終えて〜

2017年09月14日 11:37 by sakaiosamu
2017年09月14日 11:37 by sakaiosamu

先週、9月8日にSSK新社会システム総合研究所の主催でセミナー「民放キー局のメディア戦略」が開催された。これは筆者がSSKからの依頼を受けて昨年に続いて企画したものだ。各局の登壇者のみなさんにお願いするコーディネーター役と、当日のモデレーター役を務めさせてもらった。

企画意図としては、このところテレビ局はネット活用、そしてBS、CSといった衛星放送の活用も経営戦略の柱とするようになった。これについて、ネット配信の担当の方ではなく、あえて局の中枢の部門の方に登壇していただき、地上波から他のメディア(局により3つとか4つ、5メディアなどと呼んでいる)までどうとらえているのかを主題にお話いただくものだ。

各局から登壇していただいたのは、写真左から日本テレビ・岡部智洋氏、テレビ朝日・清水克也氏、TBS・茂川博史氏、テレビ東京・縄谷太郎氏、フジテレビ・立本洋之氏。岡部氏、縄谷氏、立本氏は編成部長で、清水氏は編成戦略部長、そして茂川氏は東京放送HDの総合戦略部長だ。セミナーの趣旨をご説明したら日テレ、テレ東、フジの場合は編成部長に話が行き、テレ朝は編成局内に編成部とは別にできた編成戦略部に、TBSはホールディングスの総合戦略局という部署に話が行ったということ。

局によってちがうが、トータルなメディア戦略を意識しはじめた証しだと言えそうだ。

さてこのセミナーについてはディスカッションでの発言内容を詳細に紹介するのは避けたい。「あの局のあの人がこう言った」ことをオープンにするのはセミナーのポジション上するべきではないからだ。個々人の発言ではなく、トータルで受けとめた印象や、私として感じた新しい潮流などを俯瞰的に書き留めた記事にしたいと思う。

その前に、セミナーのイントロダクションとして筆者がスライドで見せたものをざっと紹介しておく。自分でスライドを作って自分で驚いたことがあるのだ。

議論の前振りとして、各局の視聴率、放送収入、会社の売上げ利益をグラフにしてお見せした。

これは視聴率(プライム)の2004年度から2016年度の推移。説明するまでもなく赤い線(=フジテレビ)がはっきり下がっている。三冠王を奪われた2011年度からではなく、もっと前から下がりつづけている点に注意。NHKは元データに2008年度以降しかないのでこうなっている。去年くいっと上がっているのが気になる。

視聴率が下がりつづけているフジテレビだが、昨年度の放送収入では日テレには抜かれているがまだテレ朝とTBSには抜かれていない。

 

意外にもタイム収入に絞るとフジテレビは2014年度までトップだった。タイムは視聴率とは少し関係なくセールスされているということだろう。

スポットのほうが視聴率の影響が早く出る。それでもフジテレビが日テレに抜かれたのは2013年度だ。

フジテレビ単体の売上高も、日テレには抜かれたもののテレビ朝日・TBSより上だ。底力だろう。

グラフを作っていちばん驚いたのがこれだ。日テレの営業利益はダントツだ。放送局の利益率が14%もあるとは信じられない。一方他の局は営業利益率が低すぎだ。

テレビ東京は相対的に利益率がよく、フジテレビより金額も多い。これは決算説明会の書類をよくよく見ると、放送収入に対してライツ収入の比率が高いせいだ。テレビ東京は実は最新のビジネスモデルなのかもしれない。

グループになるとフジテレビの巨額ぶりが目立つ。もちろんグループの中の会社の数や規模が違いすぎるので一概に比べられないが。

ただどっちにせよ、日テレはグループでも営業利益が高く、ずば抜けた強さを感じさせる。「経営」があるのが日本テレビだと言える。 

こうした状況を前振りとしてお見せしたうえで、みなさんとの議論に入った。その中で重要と感じたことを、俯瞰的に紹介したい。

この続きは1ヶ月無料のお試し購読すると
読むことができます。

関連記事

Inter BEEアーカイブ映像、いよいよ12月15日まで!BORDERLESSの要チェックポイント

2023年12月号

「骨なし灯籠」は新しい郷土映画であり、映画製作の新潮流だと思う

2023年11月号

INTER BEE BORDERLES、VODセッションでもらった質問に回答をいただいた

2023年11月号

読者コメント

コメントはまだありません。記者に感想や質問を送ってみましょう。

バックナンバー(もっと見る)