テレビとネットの横断業界誌 Media Border

2016年07月号

UHB北海道文化放送はネットオンリーの選挙特番にこう取り組んだ!

2016年07月14日 12:08 by sakaiosamu

北海道文化放送「#センキョ_ホッカイドウ」WEBサイトより

7月10日の参議院選挙ではテレビ局や映像配信サービスによって、ネット上でも様々な「選挙速報番組」が配信された。NHKの同時再送信、TBSニュースバード、ホウドウキョクやAbemaTVによる独自の番組、そしてニコ生とLINE LIVEのジョイントで行った配信など多様だった。おそらくネットでの速報番組がここまで揃ったのは初めてだっただろう。

これについて筆者は、Yahoo!ニュース上で記事にした。

⇒選挙速報はネットで百花繚乱。池上彰氏の向こうを張ったのは、北海道文化放送だった。

この見出しにある通り、筆者が中でも注目したのが、UHB北海道文化放送によるネット独自の速報番組の配信だった。ローカル局で地上波とは別にネットで速報番組を配信したのはUHBだけのようだ。

筆者は地上波の各局の様子をチェックしたり、とくにテレビ東京での”池上無双”を楽しんだりしながら一方で、それぞれのネット配信番組も見て回った。そのためUHBの配信をずっと見続けたわけではないのだが、時折見るとなかなかギョッとする場面に出くわして驚いた。落選がほぼ確定した候補にアポなし取材をしたり、演説の音量を測ってランキングを出したり、選挙で楽しめることをとことん楽しんでいる。

番組名の「#センキョ_ホッカイドウ」そのままのハッシュタグで視聴者も番組を楽しみながら見ていることが伝わってくる。ローカル局をターミナルにした北海道民のコミュニケーションをよそから見ているような不思議な感覚を持った。

中でも「こいでさん」と呼ばれる中年記者が、アポなし取材をしたりはっちゃけていて、面白い。Twitter上でも「こいけさんだ!」と彼が画面に出るたびに盛り上がっていた。もともと地元で人気の記者さんなのだろうか。

それにしても、何よりの印象は楽しそうだったことだ。真面目な政治の話を難しい顔でするのではなく、選挙というお祭りをみんなで楽しもうという気分で溢れている。地元アイドルグループ「フルーティ」の二人をゲストに迎えているのも、ネット上の若者たちと選挙を楽しもうという雰囲気づくりなのだろう。

その試みは成功していたと思えるが、しかし思い切ったものだ。そこには、新しいことやってみよう、若い人たちとコミュニケーションしよう、のびのび放送を楽しもう、そんな空気が溢れていたように感じた。

どうしても当事者ご本人の言葉をもらいたいと、東京支社の方にお願いし、ネット配信のプロデューサー・喜多真哉氏にメールで取材した。丁寧に回答をいただいたので、この記事上でそのまま喜多氏の文章を読んでもらおうと思う。北海道の夏の一夜に込められた熱い思いを直接感じてもらいたい。

---ネット配信を行った背景と理由について書いてください

ネットで何かできないか。どこのテレビ局もそうだとは思いますが、弊社も何年も前から検討はしていました。特に災害報道に生かしたいと。ただ、いちローカル局に人的、資金的な余裕はなく、アイデアが出てはとん挫するの繰り返しでした。一気に物事が動き出したのが、今年5月末。衆参ダブル選挙がささやかれる中、何かネットでできないかと模索を続けていました。ニコ動などメジャーなプラットホームは集客が見込めますが、調整に時間がかかるので、難儀していました。そこで、何かいい知恵はないかと、フジテレビの「ホウドウキョク」を訪問、「FNN(系列でつくるフジ・ニュース・ネットワーク)が東北被災3県の放送を配信しているサーバーを活用するとできるのでは」という話が浮上したのです。弊社とフジテレビはさまざまな回線でつながっていて、そのサーバーにアクセスするのも難しい問題ではありません。プラットホームはそれで行けると一気に実現可能な話に変わりました。さらにホウドウキョクとコラボできることはないかと思案しました。スタジオ間をつないだのはこうした背景があったためです。

その後もいろいろな議論はありましたが、ネット配信に挑戦しようという結論になりました。その時点で6月中旬。投票まで1か月を切っていました。地上波とまったく同じ内容を流す「サイマル」はできないという制約があり、ネット特番用のコンテンツを相当量、用意する必要がありました。結局、おとしどころになったコンセプトは「18歳選挙権が始まる。そもそも選挙特番を見ない18~19歳をターゲットした番組」。どうせやるなら、徹底してネットの志向に寄せてみようと練りました。双方感を出すには、ツイッターのレスがなければ、できません。番組名もつぶやいてもらおうとハッシュタグにしました。スタッフ一人ひとりの作業は膨大なもので、放送事業者の看板でやる以上、適当なことはできませんが、「自由にやれる」というムードは漂っていました。わたしを含め、楽しんでいたと思います。配信中のサブも常に笑い声が飛び交っていたのは、選挙特番では初めての経験でした。(ここから先は登録読者のみ)

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