GEM Partnersという会社について、読者の皆さんはおそらくあまりご存知ないだろう。
GEMは、映画界におけるマーケティングデータ分析会社だ。2008年設立のまだ若い会社だが、映画・映像コンテンツ業界にリサーチの概念を持ち込み、徐々に業界内の信頼をかち得てきた。いまや彼らのデータを定期的に購入している映画関係の会社は多いようだ。また毎日新聞夕刊の映画欄に、自分たちのデータをもとに読み応えのある記事を書いている。新聞掲載後に自らのサイトでも記事を公開している。
→GEM COLUMN(毎日新聞での記事を自社サイトに再掲載したもの)
GEMには優秀な人材が集まりそれぞれが、たじろぐような経歴の持ち主だ。彼らはきっと、今後ますます映画界にとって欠くべからざる存在になるだろう。
GEM Partners代表取締役社長、梅津文氏(中央)と、ディレクター・横野貴志氏(右)、シニアマネージャー・前川佳輝氏(左)
そんなGEM Partnersが2月2日付でVOD市場の2016年から2020年までの5年間予測レポートを発表した。併せて映画興行市場についても同様の5年間予測をリリースしている。そんな貴重なデータがあるならいますぐ見たい!という方は、下記ページからレポートの購入申込をしてもらいたい。
購入するかも含めて、もう少し詳しい話を知りたいという方は、さらにこの記事を読み進めてもらおう。
さてまずVOD市場の予測が、MediaBorder読者にとっては興味津々というところだろう。2014年のVOD市場はデジタルコンテンツ協会の推計によると1,255億円だったという。
これが2015年はどう変化したか、そして2020年までにどう成長するか。GEMの推計値グラフはこれだ。
まず2015年は3割弱増えて1,605億円に増えた。そして2020年には2,531億円へと大きく成長する。これが彼らの推計値だ。
さて2015年の数値、そして2020年の予測値はどう算出したのだろう。さすがの精鋭集団だけあって、なかなかロジカルに計算されている。
まず大規模なアンケート調査を行っている。昨年、1万5000人に対してVODについて聞く調査を二回行った。それによって利用率を算出。一方、dTVなどいくつかの会社は自社資料として会員数などを発表している。アンケート調査から割り出した利用率と、各社の利用者の実数から割り出した数字が2015年の数値だという。
SVODだけでなく、EST(Electronic Sell Through・ダウンロード販売)、TVOD(都度課金型配信)の推計値も含まれている。それぞれの割合はグラフの中に書き込まれている。大部分を占めているのはやはりSVODで、2015年は約1072億円ということになる。
2020年の推計値は2,531億円で2015年から6割近く伸びると見ている。ただし、これは”ベース”シナリオの数字で、他に”楽観”シナリオと”悲観”シナリオでも算出している。"楽観"だと3,000億円を大きく超えるし、"悲観"でも2,000億円を下回りはしないので、いずれにせよ今後5年間も大きく成長を続けることは間違いないと見ているという。
さらにこのグラフにはないが、DVD&Blu-rayのパッケージ市場も推計しており、面白いことにVOD市場とパッケージ市場を合わせると今後5年間は横ばいとの結果が出たと言う。それぞれ個別に算出したのにそうなったのは偶然とは言え至極当然の結果だろう。日本人が映像に払うお金の総量は変わらないのかもしれない。
さてSVOD市場に絞ると、先述の通りサービスごとに算出したので個別の”内訳”もある。そうするとまず気になるのがNetflixだ。いったいどれくらい会員を獲得できたのだろうか。
これについては2015年10月時点での推計値としてNetflix = 29万人との数字を見せてくれた。GEM Partnersとしてはじき出した数字だ。もっとも、サービス開始が9月だったので、まだ無料お試し期間中の会員数。その後、減ったか増えたかはわからない。また新たな調査が必要になる。
では次に、SVODの事業者別の数字を円グラフにしたもので見てもらおう。(ここから先は登録読者のみ)
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