テレビとネットの横断業界誌 Media Border

2015年12月号

ソーシャルテレビ推進会議・11月定例会レポート「SVODサービス利用状況」「TVerスタート一カ月とこれから」「動画広告市場の概況と展望」

2015年12月29日 09:18 by sakaiosamu

2015年も押し詰まったこのタイミングで、またまた遅ればせながらとなったが、ソーシャルテレビ推進会議の11月定例会レポートをお届けする。今回は参加者70名を超え、賑やかな会合となった。

なお、Media Border登録読者はこの勉強会に参加できるので、お申し出を。月に一回のペースでこうした定例会を行っている。(発行者の境治までご連絡を sakai@oszero.jp https://www.facebook.com/sakaiosamu)

今回の会合は恵比寿にあるソーシャルメディアマーケティング企業・アライドアーキテクツ社での開催

同社の素敵なセミナールームをお借りした。参加者もくつろげる空間だ

11月の発表は、「SVODの利用状況」「TVer起ち上げ一カ月の状況」「動画市場の最新動向」の3つ。たまたまだが、ネット動画を大テーマに据えたプログラムになり、非常に刺激的で学びの多い会合となった。


まだまだ発展途上のSVOD市場、スマートフォンでの利用率は4.7%

まず最初はビデオリサーチインタラクティブ社の深田航志氏が、SVODサービスの利用状況について発表した。同社が最近行った調査結果をもとにしており、WEB上で公開されているので参照されたい。

→ビデオリサーチインタラクティブ社プレスリリースページ


調査結果の披露の前に、まずすでに公開されている各社のデータから現状や今後の推計を紹介した。興味深かったのは、”潜在利用者数”の推計。博報堂DYMP社の調査によればSVODサービスの利用者と利用意向者を合わせると18.7%だった。これを総務省の調査によるインターネット利用者約1億人と掛け合わせると1870万人になるというのだ。大ざっぱな試算ではあるが、感覚的にはリアリティのある数字だと受けとめた。

後半ではいよいよ、ビデオリサーチインタラクティブ社ならではの調査数字を発表した。とくに同社ではCloudishという、スマホアプリ利用の実数調査システムを持っており、アンドロイド限定ながらスマートフォンでのSVOD利用がつぶさにわかる点が興味深い。

結果、スマートフォンでのdTV、hulu、Netflixなどの主要なSVODサービスの利用状況は、保有率で27.2%、利用率では4.7%となった。また個々のアプリの所持率はdTVがやはり断然高く、鳴り物入りでやって来たNetflixやAmazonはまだまだこの時点の調査では1%にも達していなかった。一方アクティブ率では逆にAmazonとNetflixが高くdTVのランクは下がっている。新興勢は使いはじめればよく使われるようになる可能性があるが、とにかくまだまだ普及途上であることがよくわかった。

この結果を深田氏はマンガで表現して見せてくれた。Netflixなどが鳴り物入りでやって来てSVOD市場について業界が騒いだ割には、一般ユーザーはYouTubeなどに夢中になっている、というもので、わざわざ自費でcoconalaというマンガ制作サービスに発注したそうだ。みずからも苦笑しながら見せてくれたマンガに参加者もくすくす笑う一幕だった。


100万ダウンロードを達成したTVerは5局協力体制のたまもの

続いて10月26日にローンチし3週間で100万ダウンロードを達成したばかりのTVerについて、中心人物の一人であるTBS龍宝正峰氏と、サービス制作を請け負ったプレゼントキャスト社長・須賀久彌氏が発表した。これについては11月に記事として配信した龍宝氏のインタビュー記事も思い出してもらうといいだろう。

→「わからないからやってみよう、何がわからないかがわかるから」龍宝氏インタビュー記事

発表ではまずTVerの概要を説明。民放の在京キー局5局による見逃し配信の”ポータルサイト”であることが語られた。2014年にまず日本テレビが見逃し配信サービスをスタートし、それから今年の春までに残る4局も個別に同様のサービスを開始。一方でその共通の窓口サイトとして10月26日に立ち上がったのがTVerである。開始時点で50番組が広告付きで無料で視聴でき、マイリストやトピックスページもあると説明された。

またTVer登場の背景として、録画機の普及でCMスキップが問題となり、視聴デバイスも多様化する中で、違法アップロードも無視できない状態になっていることが挙げられた。

さらに見逃し配信サービスは、テレビでのリアルタイム視聴への回帰にもつながる効用も見られ、違法アップロード対策にもつながりつつあることなどが資料とともに説明された。

TVerの起ち上げ前には、各局の足並みが揃っていないのではとの噂も聞こえていたが、龍宝氏はプロジェクトに参加した各局のメンバーは一致団結していたことを熱く語り、力を合わせることでスタートできたことを強調した。その語りぶりはTVerのダウンロードを後押ししたと言われるドラマ『下町ロケット』とも重なる情熱にあふれており、参加者の心にも少なからず響いたようだ。テレビ局同士の協力関係は、ネット連携では重要になってくると思えた。


動画広告は急成長中、市場規模も単価も上昇してホットな状況へ

最後に、ネット広告のメディアレップとして知られるDAC社の木村洋平氏が動画広告の最新状況を発表した。前々からお願いしていたのが、ちょうどこの回に実現し、他の発表との兼ね合いもよいタイミングでの発表となった。

 

まず前半では、ネット広告のヒストリーを概観して語り、この分野の知識が薄い参加者にも大まかな流れが理解できた。とくにここ数年は広告取引の自動化やビッグデータの活用などが進んで、非常に高度なアドテクを駆使する時代になっていることが感じられた。

そのうえで語られる動画広告の現状は、いままさに急成長し日に日にホットになっている状況であることがよくわかった。いまの主流はやはりYouTubeやYahoo!の動画の前に挿入されるインストリームと呼ばれるタイプだが、FacebookやTwitterのタイムライン上に出てくるインフィードタイプ、さらにLINE動画やキュレーションメディアに出てくるものも、まだ規模は小さいが急浮上してきているという。単価も上昇しており、DAC社が扱う中で数千万円の出稿金額はもはやめずらしくない状況だ。

最後に、動画広告ではターゲティングをうまく使うべきとの考えが述べられた。DMPを活用すれば「似た行動のユーザー」に対してのターゲティングなども可能で、データを使った商品化に取り組むべきではないかと語った。もちろんその際はDACのDMPを活用してほしいとのセールストークでもあるのだが、TVerに限らず番組の動画配信が具現化していく中、そこでの広告商品の開発もテレビ局のこれからの課題になっていきそうだ。

 

今回の会合はテーマが大きく重なったこともあり、非常に聞き応えのある内容の濃いものだった。2012年春以来つづけてきたソーシャルテレビ推進会議だが、三年目になってますます盛り上がってきているようだ。いろんなことが”はじまった”2015年も終わり、2016年に入ればさらにホットになりそうだ。来年からも充実した、なおかつ楽しめる勉強会をめざして運営していきたい。


 

 

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