DXがいわゆるバズワード化しつつある。新政権がデジタルをひとつの旗印として掲げたことも拍車をかけているようだ。
ただ、DXが得体のしれないバズワードで終わるのか、この機に本気で取組んで新時代への足がかりにできるのか。結局は取組む人びとの努力と発想の柔軟さによるだろう。取り組んでいる人びとはとっくに始めていて、そんな言葉さえ関係なく次のステップへ進んでいる。
名古屋テレビの「ハピキャン」は、きっと数年後に「番組のDX化」の成功事例として取り沙汰されるだろう。最初に直感的にもそう感じたが、関係者にお会いして直に話を聞いてますます確信した。
銀座にある名古屋テレビ東京支社で、コンテンツビジネス局長・多湖慎一氏、同局コンテンツプロデュース部長・服部保彦氏、そしてハピキャン事業プロデューサー・大西真裕氏のお三方とお会いした。大西氏の肩書きがまず「ハピキャン」が何かを言い表している。番組ではなく、ハピキャンという事業なのだ。
「ハピキャン」とは何か。わかりやすい説明としては、キャンプ未経験者のおぎやはぎが、キャンプに詳しい人びとに少しずつ学んでキャンプを会得していくバラエティ番組、ということになる。
だが実は、番組は「ハピキャン」の一部でしかない。「ハピキャン」とは何か、という問いへの正しい回答は「ハピキャンとはWEBサイトである」ということになる。その一部として番組コンテンツがあり、それは放送もされている。順番としてはそうなるのだ。
その構造は、「ハピキャン」のWEBサイトを見れば明らかだ。試しに「https://happycamper.jp/」を見にいくといい。
「HOME」画面がこれ。キャンプをテーマにしたWEBサイトだ。タブの中に「おぎやはぎのハピキャン」が含まれている。「おうちキャンプ」「ワークマン」「アウトドア用品」「ソロキャンプ」と他のタブと並列の形で「おぎやはぎのハピキャン」がある。テレビ番組があってその傘の下に番組絡みのコンテンツが置かれているのではない。先にWEBサイト、次にテレビ番組、の順番だ。
そこに「ハピキャン」のユニークさと将来性が潜んでいるのがわかるだろうか。テレビ局がネットビジネスを考えようとする場合、普通は番組を先に置いてしまう。そうすると番組を毎週放送することにエネルギーを費やしてしまい、ネット上でどう展開しどうビジネス化するかは二の次になってしまう。それではダメだと、今度は放送事業とは関係なくネット上だけでビジネス化しようとする。そうすると放送と無関係に進めてしまい、放送局の優位性が生かせず終わってしまう。
「ハピキャン」はそんなテレビ局のネットビジネスが抱えがちなジレンマを乗り越えている。そのポイントが、ネットが主、テレビが従の設定付けだ。どうしてもテレビを主に置いてしまう人が多い中で、なぜその設定で最初から取り組めたのかが不思議であり驚きだった。これについては、部署として会社として「ハピキャン」をどう位置づけているかがポイントとなる。
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