テレビとネットの横断業界誌 Media Border

2016年12月号

2016年MediaBorder話題ランキングに投票しよう!(前編)

2016年12月05日 12:06 by sakaiosamu
2016年12月05日 12:06 by sakaiosamu

早いもので、ついこないだ明けたと思っていた2016年が、もう最後の月を迎えてしまった。テレビとネットの融合領域、Media Borderでは今年、例年にも増していろいろな出来事があった。そこで12月最初の記事ではそんな2016年を振り返り、10大ニュースの形で整理してみたい。

そして読者参加型の企画として、以下に挙げる10大ニュースの中から、読者の皆さんの投票でランキングを決めようと思う。記事の最後に載せるURL上でみなさんに投票してもらい、年末最後の記事で結果を発表するつもりだ。ぜひあなたにも参加してほしい!

以下、ランキングの候補を挙げていき、それぞれについて簡単に解説していく。順序は筆者が思いついた順にすぎないので気にしないでもらえればと思う。それを読んだうえで投票をお願いしたい。

●メディアの「分散化」キーワードに

ここ数年いわれてきたことだが、今年はとくに「分散化」が浮上した。スマートフォンの普及で、人々とメディアの関係がすっかり変わってしまったことが要因だろう。

「分散化」には二つの側面がある。ひとつは、ユーザーのメディア接触が分散化し、断片化したことだ。テレビ番組を視聴する際、タイムシフト視聴もするし、若者はYouTubeで見たい部分だけを探して見る。見逃したドラマはTVerで見ることもHuluで見ることもできる。その時、作り手の意図通りの時間では見てくれない。見たい箇所だけを拾い見することもできる。

こうしたユーザーの傾向に合わせて、メディア自らの分散化もはじまっている。Buzz Feedがその典型だが、自分のサイトだけでなくFacebookやYouTubeなどにどんどん置いていく。ユーザーとの"タッチポイント”を増やすことで、マネタイズの機会も増やせるかもしれない。こうしたメディア運営を「分散型メディア」と呼んでいたが、フジテレビのホウドウキョクも10月のリニューアルの際、この形を構築している。メディアとはその場所に訪れなければならないものだったのが、ユーザーの行動範囲の中に滑り込んでくるものになったのかもしれない。

●同時配信の議論が急浮上

10月19日に朝日新聞一面に掲載された「TV ネットで同時配信 19年にも全面解禁」は放送業界に大きな波紋を呼んだ。見出しの立て方も記事の内容も、事実とのズレが多く業界に誤解を招くものだったと筆者は感じている。同時配信については「議論をしよう」となったこと以外、何も決まっていないのだ。だがこの記事をきっかけに、業界では一気に「同時配信にどう対処すべきか」という議論が急浮上した。

そんな中、11月末からNHKによる同時配信の実験プロジェクトがはじまった。今回は特別なアプリによる同時配信と見逃し配信がセットになったものだ。筆者も使ってみたが、UIが非常に良くできていて操作しやすい。

NHKは同時配信の道を進んでいくのだろう。だがその料金体系をどうするかは難しい議論になりそうだ。一方、民放側もうかうかしてはいられない。各局での前向きな取組みが必要であるとともに、民放会としてどうしていくべきか、何が必要かを大きな議論にしていく空気づくりが求められていると思う。

●AbemaTVスタート

テレビ朝日とサイバーエージェントが共同で取り組んだAbemaTVが4月にスタートした。テレビとネットの融合をまさに形にしたような事業で注目を集めた。しかも好発進をしたのちに順調に伸びていき、11月初めにはダウンロード数1000万を達成してしまった。

サイバーエージェントとして多大なる投資を数年間行うと藤田社長は発言している。成功するまでやめない覚悟が伝わってくる。その力強い旗振りのもと、テレビ朝日のスタッフがサイバーエージェントの若い社員たちとタッグを組んで番組づくりに身を投じているのも興味深い。

ビジネスとしての結果は来年以降になりそうだが、放送業界としては目を離せない存在だ。

●ライブ配信、活性化

ネットでの放送メディアであるAbemaTVと軌を一にするかのように、ライブ配信サービスが盛んになったことも2016年の傾向だった。まずLINE LIVEが一昨年12月にスタート。いきなり十万単位、百万単位の視聴者を集める配信が出てきて、業界の注目を浴びた。夏からは一般ユーザーが自分で映像配信ができるようにもなり、人々にとって身近なものになっていった。

同様に、FacebookやTwitterなど既存ソーシャルメディアもライブ配信を強く打ち出した。Facebook LIVEはテレビ局が急な事件事故を現場から中継するのに使うのが当たり前になった。福岡の道路陥没は視聴者が撮影した映像も含めて現地から刻々と状況が伝わってきた。アメリカ大統領選の様子は、海外メディアもライブ配信を駆使し、トランプ氏の論戦が世界中に伝わった。

ライブ配信は放送と似ているが、いろんな意味で違うものだ。その特長をうまくつかんで利用すれば、メディアにとっても一般ユーザーにとっても有意義なものになりそうだ。

●タイムシフト視聴率はじまる

テレビ放送にとってエポックメイキングだったのが視聴率測定の変化だ。関東だけだがサンプル世帯数を900に増やすとともに、タイムシフト視聴率の調査が10月からはじまった。リアルタイム視聴率と合わせて「総合視聴率」も発表され、リアルタイム視聴率との差に業界関係者は驚いた。

ただ、ドラマと一部のバラエティ以外はさほどタイムシフト視聴はなく、大きな差があることもわかってきた。人々は非常に賢く、見逃したくない番組だけを録画しているのだ。

またマネタイズの問題はまだまだこれからのようだ。タイムシフト視聴率は当然、番組を見た数値であり、CMがスキップされた時間は反映されていない。スポンサー側としては、CMを見せたくて広告費を出すのだから、どれくらい見られたかまで示されないと、タイムシフト視聴率を広告取引に生かす気にはならないだろう。

この問題をどう議論し、どう折り合いをつけるか、今後喧々諤々の議論になるのではないか。成り行きを見守りたい。

さてここまで、投票の選択肢となるトピックを5つ解説した。残りの5つのトピックは明日、後編記事で配信する。それにもぜひ目を通していただき、投票してもらえればと思う。投票のURLも明日の記事でご案内するので楽しみにしてほしい。



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