テレビとネットの横断業界誌 Media Border

2016年05月号

広告はこれからどうなるか?デジタルマーケティングの先達に聞く〜IMJでCMOを務める江端浩人氏インタビュー〜

2016年05月20日 17:41 by sakaiosamu
2016年05月20日 17:41 by sakaiosamu

MediaBorder読者諸氏は江端浩人氏をご存知だろうか。広告業界では知らない人はいない、デジタルマーケティングの最先端を切り開いてきたマーケターだ。コカ・コーラジャパン在籍時には、コカ・コーラ パークを開設し話題を呼んだ。その後、マイクロソフトに在籍したのち、2014年からはWEB制作やデジタルマーケティングを手がけるIMJ社の執行役員CMO(Chief Marketing Officer)に就いている。

立場をスポンサーからエージェンシー側に変えて、これまでの知見をたくさんの企業のために役立ててもらおう、ということだろう。江端氏の提案ならぜひにという企業は多いはずだ。

コカ・コーラ パークは映像もふんだんに活用した手法で、最近の動画広告への注目を10年近く前に先どりしたようなプロモーションだ。デジタルマーケティングの先頭を走ってきた江端氏に、今後の広告やそのためのメディアの役割をじっくり聞いてみた。

----江端さんのご経歴を調べると、最初は伊藤忠に入られたんですね。

江端浩人氏(以下、江端):そうです。伊藤忠に入って宇宙航空機部という部署で仕事をしていました。グローバルな仕事をしたいと思いまして。伊藤忠は野武士集団的な会社で気風も気に入りました。

----そこからベンチャーを創業されたんですね?

江端:コンピュータが好きで中学からやっていたんですけど、伊藤忠在籍中の92年から2年間スタンフォード大学に留学してインターネットに接したんですね。文献の検索も図書館からインターネット経由でできたんです。これはすごいなと。世界中に解放されるという話だったので、世の中変わるだろうなと思いました。Windows95が発売されて、それじゃあちょっと新しい世界に飛び込んでみようと創業しました。伊藤忠に不満があったわけでなく、インターネットで何かをやってみたかったんですね。

----創業したのは96年。ネット経由のDPE(写真の現像・焼付け)の会社ですよね?

江端:そうです。もうちょっと遅ければInstagramみたいになったんでしょうけど(笑 まだ回線が細いし画像もよくなかったのでいろいろ苦労しました。

----最初の頃のインターネットってファックスみたいな音がして(笑

江端:ピーヒョロロロロ・・・(笑

----で画像がじわじわじわーっと出てくるんですよね。その頃に画像を扱うのはそうとう大変でしょうね?

江端:でも最初だったんでPRとかタイアップとかいろんなプロモーションができましたね。もうちょっとブロードバンドが早く来てくれたらというのはありましたけど(笑

----そこから2005年にコカ・コーラに行かれたわけですよね?そこが不思議で、なぜマーケティングの世界に?

江端:デジプリ(創業したネットDPEの会社)はプラザクリエイトさんに売りまして。そのあとにコカ・コーラさんから声がかかって、デジタルマーケティング部門を作るので立ち上げてくれないかと。コカ・コーラの当時の社長に、「何したらいいんですか?」って聞いたら、「まだデジタルは原始時代だから何やったらいいかわからない。どうすればいいか提案してくれ」と言われたんです。それだったら面白いかなと思いまして。世界一のブランドの資産と資本を使って新しいことをやるっていいなあと。半年ほど、内部状況を調査してコカ・コーラ パークをつくりたいという構想を出しました。

----2005年ってまだデジタルマーケティングって黎明期ですかね?

江端:Yahoo!Japanはすでにあったし、いまとは全然違うけどデジタルマーケティングはあったと思いますよ。まぁ、まだバナーがあるくらいで検索が大きくなったころでしょうか。

---違う領域からマーケティングの世界に入られてどう見えたんでしょう?

江端:ターゲットによって違うと思ったんですね。ファミリー向け中心でしたが若者に向けてのデジタルもわかっていたし、有機的に複合すればいいと思っていました。それから、単独でやるよりどうやったらデジタルが活性化するかを考えると、デジタル予算を増やすより、既存の広告にWEBの誘導をつけるのが効率がいいと考えました。そこにSEOでお客さんがとれれば追加の予算はいらないですからね。マスの中で反応した人をデジタルに連れて来ればいいと考えたわけです。(ここから先は登録読者のみ)

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