テレビとネットの横断業界誌 Media Border

2016年04月号

動画配信は、マーケティングの段階に入った〜Adobeの動画配信プラットフォームPrimetimeについて聞いてみた〜

2016年04月28日 16:53 by sakaiosamu
2016年04月28日 16:53 by sakaiosamu

Adobeというと、PhotoshopやIllustrator、Premiere Proなどクリエイティブ制作アプリケーションのブランドとして知っている人は多いだろう。そのAdobe社が、「Primetime」という動画配信プラットフォームを持っており、日本でも本格的に展開を始めるとのニュースが先日聞こえてきた。

→CNET記事「Adobe Primetime、日本市場で本格展開--パートナーシップを拡大」

「アドビが映像配信?」戸惑いを感じつつ、その戸惑いに興味を覚えた私は、さっそく取材に行ってみた。前々から存じ上げているアドビシステムズ株式会社ソリューションコンサルタント・太田禎一氏とPRマネージャー・坂田彩氏が対応してくれて、じっくりお話をうかがった。そこからわかったのは、制作アプリケーションのAdobeがマーケティングツールの領域に大きくシフトしていることと、動画配信がとにかく番組をネットに流してみる、その次の段階に入ったことだった。

大崎のオフィスで迎えてくれた太田氏(左)と坂田氏(右)

私がAdobeの動画配信領域での日本展開に興味を持ったのは、ニールセンの話を聞いていたからだ。ニールセンはアメリカではテレビ視聴率をネットも含めて計測するシステムをほぼ完成させているのだが、その測定体制を可能にしたのが、Adobeとの提携だったのだ。この点については、坂田氏がイントロダクションとして説明してくれた。

「Adobeは2009年にWEBのアクセス解析ツールOmnitureを買収しました。これを端緒に、WEBマーケティングに必要な多様なツールを整えていったのです。どれも買収してるんですが(笑)。そしてこれまでのPhotoshopやIllustratorなどをCreative Cloud、AcrobatなどをDocument Cloudと定義し直し、WEB解析などのマーケティングツールはMarketing Cloudとしてご提供するようになったのです。」

Adobe製品はアメリカでは、制作ツールとして使われているだけでなく、解析などマーケティング領域でもかなり浸透している。それが、ニールセンの視聴測定にも非常に有効だったということだ。ニールセンのパネルベースの視聴測定結果にAdobeのMarketingCloudで収集している測定データを重ね合わせることで、データの精緻化や補正が可能になるのだ。

Adobeがこれまでの制作アプリケーションをCloud化して新たな提供手法を整えたのは知っていたが、同時にマーケティング用のツールを整備していたのはちゃんと理解できていなかった。

その説明を引き継ぐ形で太田氏がさらに話を進めてくれた。

「Marketing CloudはWEB解析をはじめ様々なツールで構成されています。必要に応じて選んで使っていただけるもので、多様なWEBサイトのマーケティングに利用できます。その中のひとつが今回日本で本格展開することになったPrimetimeなのですが、これだけは動画のためのもので、他と少し色合いが違うんです。テレビ局や映画会社など、プロフェッショナルが制作した動画コンテンツのためにできています。」

プロ制作の動画のためのプラットフォームだからこそ、日本での本格展開はタイミングを見計らっていた。今月、名乗りを挙げたのは、日本がいよいよ動画配信の本格タームに入ったと見たからだろう。実際この二年ほどでテレビ局が動画配信に取り組むのは当たり前になり、次のステップにさしかかろうとしている。ではPrimetimeはどんなソリューションなのか、もう少し詳しく聞いてみよう。(ここからは登録読者のみ)

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