テレビとネットの横断業界誌 Media Border

2016年02月号

北海道テレビ『LOVE HOKKAIDO』はこれからのテレビのひとつのモデルかもしれない

2016年02月29日 11:17 by sakaiosamu
2016年02月29日 11:17 by sakaiosamu

北海道テレビ(以下HTB)と言えば、テレビ界では『水曜どうでしょう』の制作局として認識されている。ローカル局の番組が日本中で人気を呼んだ最たる例として皆さんご存知だろう。大泉洋を全国区のスターに押し上げた、そのパワーは類のないものだ。

だがHTBのユニークさは『水どう』だけではない。よくよく調べると、ローカル局でありながら先進的な姿勢を持ち興味深い事例が多い。北海道の魅力を世界に配信する『LOVE HOKKAIDO』もその例だ。

※画像は番組トップページより

筆者はたまたま札幌に行く機会があり、HTBにおじゃまして『LOVE HOKKAIDO』を取材することができた。ほんの一時間程度お話を聞いただけだが、そこに見えてきたのは、これからのテレビのひとつのモデルとも言える新しい形だった。

お話を聞いたのは、HTBの国際メディア事業部。HTB本社は札幌市の中心部から少し離れた郊外にあるのだが、この部署は逆に市の中心のビルに独立した形で置かれている。うかがうと、瀬志本勇二・副部長と橋谷俊氏、そして星悠平氏が応対してくれた。

左から橋谷俊氏、星悠平氏、瀬志本勇二副部長

『LOVE HOKKAIDO』には、その布石となった番組がある。『北海道アワー』という、台湾のJET TVで放送されるために97年にはじまった番組だ。この97年という年には大きな意味があるだろう。90年代後半、バブル崩壊後も日本経済はなかなか立ち直れず、とくに北海道は厳しい状況に陥っていた。日本中の金融機関が不良債権に苦しむ中、北海道拓殖銀行は経営不安に陥り、98年には破たんに陥っている。

だからこそ、HTBは新しい試みに挑んでいく。逆境の中で臆することなくむしろ冒険する道を選んだところが興味深い。海外にも展開すべしと、住友商事が中心となりTBSなども参画した台湾でのテレビ局設立に、ローカル局として唯一名乗りをあげた。JET TVは"Japan Entertainment Television"つまり日本の番組を台湾に放送するために設立されたテレビ局だ。そして放送を開始したのが、北海道の観光地や風物を紹介する『北海道アワー』だった。

この試みは狙いが的中し、北海道に台湾からの観光客を呼び込むことができた。このノウハウを活かして、他にもいくつかの国で単発の番組を放送している。この活動を何年間も続けた経験がのちに生きるのだ。

『北海道アワー』は、JET TVが日本専門チャンネルから総合編成のテレビ局に変更したため、その放送を終えた。その後を継ぐ形で2013年にはじまったのが『LOVE HOKKAIDO』なのだ。(ここから先は登録読者のみ)

この続きは1ヶ月無料のお試し購読すると
読むことができます。

関連記事

imp保証型でZ世代向けCM!そんなのあり?ということで話を聞いてみた

2024年04月号

ローカル局の価値はマーケティング力で高められる〜北陸朝日放送の挑戦

2024年03月号

ローカル局は災害にどう対処するか〜各局の能登半島地震報道まとめ〜

2024年02月号

読者コメント

コメントはまだありません。記者に感想や質問を送ってみましょう。

バックナンバー(もっと見る)