テレビとネットの横断業界誌 Media Border

2015年12月号

テレビ番組が動画広告の水準を高める〜3000万UBの動画プラットフォーム、GYAO宮本社長が語るテレビの価値〜

2015年12月25日 17:49 by sakaiosamu
2015年12月25日 17:49 by sakaiosamu

Media Borderの読者諸氏なら、GYAO!に置かれる動画に何度となく接してきただろう。GYAO!はYahoo! JAPANが子会社のGYAOと運営する動画サービスであり、日本国内では最大級のユーザー数を誇る。YouTubeのような動画投稿サービスとは違い、映画やテレビ番組などプロフェッショナルコンテンツをきちんと権利処理して揃えている。GYAO!ストアという有料課金サービスもあってこちらもかなりの規模だが、一般的には無料動画サービスとして認識されているだろう。

実はGYAO!は当初、USENの事業としてはじまった。それが2009年にYahoo! JAPAN傘下におさまった時点からテレビ局との連携を強くしている。いま各テレビ局が見逃し配信を運営する際には、いわゆる”支店”として欠かせない存在だ。見逃し配信がいよいよ活性化しはじめたいま、テレビ局にとってのGYAO!は重要度を増していきそうだ。

そこで同社の宮本社長にお時間をいただき、GYAO!全般のこと、そしてテレビ局とのパートナーシップについてお話をうかがった。

※GYAO!は当初GyaOと表記していてYahoo! JAPAN傘下になったあとGYAO!の表記に変わった。記事中ではすべてGYAO!と表記している。

GYAO!は最初USENの新規事業として2005年にはじまったことをよく憶えています。鳴り物入りではじまって「パソコン上でテレビができるのか?」と注目されました。でもその後、どうなっているのかな?と思っていたら2009年にYahoo! JAPANさんが買収して驚きました。

Yahoo!動画は権利処理をきちんとやるサービスとして、やはり2005年からスタートしました。数字は伸びているものの市場を作るほどには至っていないという実感がありまして。GYAO!はやってることが近くコンテンツも作っていて「インターネットテレビ」を標榜していました。我々の発想としては、2つが一緒になることでネットでの動画配信事業が活発化できるのではないかということでした。GYAO!もYahoo!動画も広告ビジネスでまだ市場が大きくなく、ネットでの動画広告は商品設計も当時はままならず、サービスとして人を集めていたものの事業としてはまだまだでした。合算できるところもあるし補完できるところもあると考え、一緒になりました。

なるほど、そして確かに2つが合わさることで大きな市場になったわけですね。

そうですね。あのままだと下手をすると両方とも伸びないままだったかもしれませんし。そこそこやれてたかもしれませんが、思い返すとあらためて一緒になってよかったと思っています。無料動画というユニークな立場でやらせてもらえてます。

そうですね、考えてみると投稿サイトとは違う、プロが作ったコンテンツを無料で見せるサービスは他にないですね。海外でもあまり聞きませんし。米国のhuluはもっと限られたコンテンツです。世界で見てもユニークですね。発展途上同士で一緒になって、うまく行きはじめた実感はいつごろからでしょうか。

2009年はまだ1+1が2にもならなくて統合しただけでしたね。2011年頃から動画広告市場が成り立ってきた感じがあります。スマートフォンが出てきたのを見て、いち早くアプリを起ち上げたのが2010年後半でした。三年目ぐらいから事業として手応えを見いだせるようになりましたね。スマートフォンの登場で動画市場が活性化し、視聴者数もさらに増えたわけです。いまではスマートデバイスの視聴数が半分にはなっていますから、PCだけだといまの状況はなかったかもしれません。

Yahoo! JAPANの傘下に入ることでそのトラフィックによってかなり活性化したのではと思っていたのですが、それだけではなくスマートフォンの普及が必要だったわけですね?

そう思っています。Yahoo! JAPAN全体としてスマートフォンシフトを2012年の春から仕掛けていきました。それもあってスマートデバイスでの視聴が増え、GYAO!も活性化しました。そしてスマートフォンによってPC視聴も増えました。映像を落ち着いて見るのはPCが向いており、相乗効果が出たのだと思います。映像市場ではPCもまだまだ重要だということです。

ユニークビューワー数では国内2位、YouTube以外とは差がつきはじめている

スマートデバイスに早くから力を入れた効果が、ここへ来て強く出てきている。

ラインナップは動画と名のつくものはすべてといった感じですね。

権利処理されたものであれば、国内外問わず手に入れられるものはお預かりする方針です。Yahoo! JAPANの利用者が日本のデモグラに近いので、幅広いカテゴリーの動画を多様なお客様に視聴してもらえるよう心がけています。受け皿としては絞るより総合的に広くしようという考え方ですね。ベーシックにはそうやってニーズのあるところはおさえていってますが、一方で広告ビジネスなので、広告価値の高いF1を増やすための作品を入れていくなど編成の上での強弱はあります。ただとにかく、このジャンルは扱わない、ということはないです。

有料のGYAO!ストアもありますが、使い分けやバランスはどういう方針でしょう。オプション的な位置づけでしょうか?

どっちが主というより、出てくる作品が全然違うので分けているということです。コンテンツホルダー側が、有料で売りたいのか無料で見せたいのかを示してこられますから。事業的に分けてるのではなく、ホルダー側のニーズに沿ってやっているということです。我々はプラットフォームなので場所を用意して広告でお返しするか有料でやるか、両方対応できますという姿勢ですね。確かにGYAO!は無料だと打ち出していますしイメージ的にもそうとらえていただいていますが、実際には両方大事にしていますし、ユーザーの交錯も起こっています。電子書籍やゲームでもやっているように、ドラマの一話は無料で続きは有料だとか。

これからの目標はどういうところでしょうか?

無料のADVODはユニークだと思いますので、プロモーションメディアとしてのニーズに応えていきたいです。そのためにはGYAO!の利用者を増やすのがますます重要です。月間の視聴ユニークブラウザ数で言うといま3000万くらいです。ブラウザ数では日本全体の半分も行ってないはずですから、まだまだ伸びしろがあって5000万くらいまでいきたいですね。Yahoo! JAPANだとデイリーで8500万くらいありますから3000万は多くないと思っています。スマートデバイスが普及する一方、PCもまだまだ機能していますし、十分いけるのではないでしょうか。そのためにはコンテンツが大事です。メディア力を活かした他とは違う集め方をしていきます。いまSVODではオリジナルが話題になっていますが、広告ビジネスではかけたコストを回収できないでしょう。そこにリソースを投下するより、プロモーションとか、たくさんの人に流通させるとか、そういう強化を徹底的にやりたいと考えています。

なるほど、ではここからはテレビとの関係についてうかがいます。(ここから先は登録読者のみ)
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