この12月8日9日と、VRフォーラムが開催された。VRとはビデオリサーチ社のことであり、テレビ放送の指標となる世帯視聴率を計測する会社だ。
前回VRフォーラムが行われたのは2012年12月で、その時筆者はブログにこういう記事を書いている。
→「ビデオリサーチフォーラムは、視聴率だけじゃないですよ宣言だった」
前回は「提供から提言へ」をスローガンに、データを提供するだけでなくもっといろいろご提案していきますよ、というテーマで開催された。では今年は何がテーマだったのだろう。
カンタンに言うと、「広がるテレビの価値をすべて計測していきます」という宣言だったと思う。そのことをもっとも表していたセッションが、「ビデオリサーチが描く”これからの視聴率”」と題されたものだった。同社テレビ調査部長、つまり屋台骨であるテレビ視聴率を計測するセクションの長、橋本和彦氏が、今後の視聴率計測の方針を発表したのだ。
ポイントは「分散したテレビ視聴をすべて計測する」ことだ。
- 視聴率のサンプル数を現状の関東600世帯から900世帯に拡大
- タイムシフト視聴も計測する
- スマートデバイスによるテレビ視聴の測定準備をする
- 関西・名古屋をはじめ徐々に全国で同様の体制を整える
2016年10月からスタートし、視聴対象やエリアを徐々に広げていくようだ。
非常に画期的だと思う。世帯視聴率のみでの計測はテレビの可能性を小さくしてしまいかねない。若い人はリアルタイムでテレビでの視聴から離れているが、意外にスマートフォンで(違法サイトで)視聴している。TVerもはじまったいま、それも含めて計測するのはテレビを自由にすると期待できる。
ちなみに、アメリカではすでにこの体制づくりにとりかかっている。この画像は昨年のInterBEEで米国のニールセン社から来たソロモン氏が発表に使ったスライドの一部だが、このマトリックスが2015年に完成すると聞いている。
この図については、一年前のAdverTimesの記事でもふれている。
タイムシフトについてはC3と呼ばれる、放送後3日までの録画視聴も含めた数字が指標としてすでに使われている。この表でも「ライブ&タイムシフト」となっているように、テレビ視聴計測とは両方を含むのが標準になっているのだ。
このマトリックスに日本の視聴計測も近づくことが発表された。今回のフォーラムの主眼はそこであり、整えばテレビのビジネス価値が大きく変わる可能性がある。
もっとも、リアルタイム視聴を計測したとして、それがビジネスに生かされるかどうかは次のステップの話だ。録画でこんなに見てるからその分提供料増やしてくださいと言って、うんわかった!とすぐに言うはずもない。そこには何らかの交渉や駆け引きが行われるのだろう。
ところで、このフォーラムの初日に行われたキーノート的なスピーチは、民放連の井上弘会長が行った。このスピーチが筆者には非常に刺激的で面白かった。先月の民放大会でも井上会長の明確に課題を挙げていくスピーチに魅かれたのだが、今回も明解な内容で面白かった。
例えば、民放の基本的なビジネスモデルを熱く語った。
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