毎月遅ればせながらになっているが、勉強会・ソーシャルテレビ推進会議の10月の定例会合について簡単にレポートしておこう。
なお、Media Border登録読者はこの勉強会に参加できるので、お申し出を。月に一回のペースでこうした定例会を行っている。(発行者の境治までご連絡ください sakai@oszero.jp https://www.facebook.com/sakaiosamu)
会合は10月28日、ニュースキュレーションで知られるスマートニュース株式会社のセミナールームをお借りして開催された。これまでも何度か使わせていただいているが、広い上にあつらえもカジュアルで素敵な会場である。同社の皆さまにはあらためて感謝したい。
今回の会合は3つのメニューが用意された。順を追ってごく簡単にご紹介していこう。
●「藤村さんに聞く!」
せっかくのスマートニュース社での開催なので、同社の執行役員でありメディア論の論客としてもよく知られている藤村厚夫氏にお願いし、メディア動向の最新事情をお聞きした。
藤村氏はブログを通じて海外も含めたメディアの最新動向を発信している。「藤村厚夫 Media Disruption」と題したこのブログは、Media Border読者にもオススメだ。
このブログで取り上げられたトピックを題材に、筆者・境が藤村氏にお聞きする形で話を進めた。とくに「ブラウザとバナー広告に消滅のきざし/ユーザー体験が変革を迫る」という記事が筆者として気になっていたので解説をお願いした。モバイル上で記事を閲覧する際、バナー広告がユーザーから拒まれはじめているのではないかとの説を紹介し、中でも「リッチ化し、背後に重たい処理を伴う広告」が増え、WEB閲覧の支障になっているという。
WEB上の記事を読み込む際、広告以外の部分より、広告を読み込む際に必要なデータのやりとりがどんどん肥大している。それは画像が重たい、ということではなく、広告に多様なアドテクが張り巡らされているため、異常なほどのデータのやり取りが生じるデータのやり取りが異常なまでに増えているからだ。
さらに、藤村氏のブログで何度か登場している「分散型メディア」というキーワードについてもお聞きした。他のサイトやFacebook上などで閲覧されればメディアとして事足りてしまうので、本拠地を重視しなくなりつつあるメディアがある。Buzz Feedがその代表例で、その傾向はひとつの大きなトレンドとなっていきそうだという。
「分散型メディア」は、実は映像にとっても重要な考え方で、映像コンテンツに動画広告を組み込んでおけば、他のサイトで閲覧されても広告媒体として機能できる。それはテキストの記事とバナーをセットにした広告より、今後はずっと有効かもしれないのだ。
藤村氏がセレクトして配信するメディア情報は非常に面白いなので、読者諸氏もぜひチェックしておくといいだろう。
●「Instagramのいまとこれから」
2つ目のメニューは、Instagramについて。実はあらかじめ日本のInstagram社の長瀬次英氏にお願いしてあったのだが、前の週にInstagramを退社し日本ロレアルに移籍されたばかりとのこと。
前職の話になるがとの前置きで、長瀬氏にInstagramについてお話しいただいた。
ご存知の通り、Instagramは写真を共有するソーシャルメディアで、日本でもユーザーが急増している。女性タレントやモデルが自分のブランディングツールとして使用し、人気タレントには驚くほどの数のフォロワーがついている。セルフブランディングとして、著名人でなくても使えることを長瀬氏は強調し、自身の写真も披露した。確かに、ブログなど文章表現と同様、写真は"どんな人間か”を雄弁に伝えるツールだと言えるだろう。
企業がブランディングに使う事例も、ユーザー数に伴い急増している。写真の中で商品を見せるだけでなく、商品とユーザーの関わりを撮影してもらったり、写真にクリエイティブを織り込むことで商品メッセージを表現するなどが盛んに行われていると言う。
InstagramはTBS『ごめんね!青春』で非常に効果的に使われたこともあり、テレビ番組のプロモーションやファンづくりのツールとしても有益だろう。いろんな意味で使いこなしたいツールとして、今後も注目されそうだ。
●エシカルマーケティング概論
最後は、デルフィスの細田琢氏からエシカルマーケティングについて概論的に話してもらった。細田氏は同社でプリウスのマーケティングに長らく携わってきた。その流れで2007年頃からエシカルマーケティングを役立てるようになり、日本でのこの分野を切り拓いてきた一人だ。
エシカルとは直訳すると"倫理的"という言葉で、そのまま受けとめるとCSRのような売上と離れた社会活動の言葉のように思えるだろう。そういう領域でも使われる言葉ではあるものの、もっと具体的な販売促進にもつながるような、マーケティングのための概念でもある。
いきなりスライドで「昔テニサー、今ボラサー」という言葉が登場する。昔の大学生はテニスサークルに所属したがり、キャンパスライフに興じるのに夢中だったが、今の大学生はボランティアサークルに入り社会貢献するのが当たり前になっている。そこでは、単純に豊かさの証としての消費ではなく、企業や商品の社会的な意義や価値を問いながら物を買う、21世紀の若者の姿が象徴されているのだ。
また決して若い世代だけの感覚ではなく、年配の女性層にも興味関心を示す人びとが多く、震災後はとくに社会的広がりが出てきているという。筆者のようなバブル世代にはなかなか実感しにくいが、確かに身近でも若い世代は80年代90年代に普通に持っていた"物欲”が薄く、高級さや豊かさよりも"エシカル度”が物を買う基準のひとつになっているようだ。
エシカルマーケティングは、もはや特別なターゲットではなく、一般的な考え方のひとつになっていると言えるだろう。細田氏は所属するデルフィスのエシカルプロジェクトの中心メンバーとして活動中だ。詳しくはこちらをご覧いただきたい。
ソーシャルテレビ推進会議は、毎月会合を開き、その時々のテーマをメンバーの方にお願いして発表してもらっている。時には会員外の方に発表を依頼することもある。Media Borderに登録している読者なら参加できるので、筆者・境宛てにご連絡を。
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